三蔵法師と言えば、『西遊記』を思い浮かべる人が多いと思います。孫悟空、猪八戒、沙悟浄とともに旅をした僧侶というイメージでしょうか。よく知られるように、『西遊記』自体は創作された話なのですが、ここに登場する三蔵法師は実在していました。唐の時代の中国に生きていた玄奘(げんじょう)という僧侶です。玄奘は、仏教をより深く学ぶためにインドへ赴き、膨大な経典を持ち帰りました。その17年間に渡る旅の記録をヒントにして、約900年後に書かれたのが『西遊記』です。

 では、なぜ玄奘は三蔵法師と呼ばれるのでしょうか。

この「三蔵」とは、「経蔵」・「律蔵」・「論蔵」の三つの蔵のことをいいます。

「経蔵」とは、お釈迦様が説かれた教えを文字化して出来た「経」をまとめたものです。

「律蔵」とは、お釈迦様が教団の日常生活の中で守らなければならないことをお示しになられた規律をまとめたものです。

「論蔵」とは、お釈迦さまがお説きになった教えを解釈・解説し、まとめたものです。

 つまり、三蔵とは、お釈迦様の教え、教団の規律、教えの解説を指し、これらに精通した人を三蔵法師と呼びました。
玄奘は、これら三蔵に精通していたとされており、このことから三蔵法師と称されていました。
 このように、三蔵に精通していれば三蔵法師と呼ばれるわけですから、玄奘以外で三蔵に精通していた人も、実は三蔵法師と呼ばれることがありました。

 ちなみに、『西遊記』の孫悟空は、仏教思想の要である「空」を「悟る」と書きますので、仏教的な発想から名づけられたのかも知れませんね。