仏教では、漢字を少し特殊な読み方をしますが、今回はそれについてお話しします。
■「漢音」と「呉音」
漢字には、「訓読み」と「音読み」があるのはご存じかと思いますが、「音読み」にはさらに、
呉音(ごおん)、
漢音(かんおん)、
唐音(とうおん)
という読み方があり、それぞれ違った発音をすることはあまり知られいなのではないでしょうか。このうち、私達が日頃使っているのは「漢音」ですが、仏教では「呉音」で読みます。したがって、法名も「呉音」で読まれることが多いわけです。
■読み方の違い
では、「漢音」と「呉音」は、どの様に違うのでしょうか。
例えば「清」は、「漢音」では「せい」ですが、「呉音」では「しょう」になるので、「清浄」は、「しょうじょう」と読みます。
他にも、「呉音」だと、
「利益」→「りやく」、
「開発」→「かいほつ」、
「自然」→「じねん」、
「決定」→「けつじょう」、
「清浄」→「しょうじょう」・・・など。
仏教者は、このような読み方に慣れているので、日頃、誤って「呉音」で読んでしまうときがあります。これは一種の職業病なのかも知れません。
■「呉音」で読むワケ
では、なぜ仏教だけ「呉音」で読むのでしょうか。
「呉音」は、元々中国の六朝時代に用いられていた読み方で、日本には、五、六世紀に輸入され、当時伝来していた仏教もこれにならい、呉音によって経典類が読まれていました。
一方で、「漢音」は、唐の時代の長安を中心に用いられていた読み方で、皆さんもよくご存じの遣唐使が持ち帰ってきたものです。これが当時の朝廷の政策に反映され、時の桓武天皇によって「漢音」を奨励する勅が出され、徐々に我々の生活に「漢音」が普及しはじめます。
■「漢音」への違和感
しかし、すでに「呉音」が定着していた仏教界は、慣れ親しんだ「呉音」から「漢音」には切り替わりませんでした。例えば、「地獄」は、「呉音」では、「じごく」ですが、「漢音」では「ちぎょく」と読みます。「じごくにおちる」を、明日から「ちぎょくにおちる」と言いなさいと言われても、違和感があったのではないでしょうか。
このように、朝廷を中心とした場所では「漢音」が普及しますが、仏教界では依然として「呉音」が残ったわけです。
■「漢音」もないわけではない
もっとも、仏教語といっても、全て「呉音」で読むわけではありません。
法名も、「呉音」で読むことが多いのですが、「漢音」で読む場合もあり、特に定められている分けではないようです。したがって、法名の読み方は、命名された方(ご住職など)に尋ねられるが一番確実かと思います。
呉音の読みは漢音よりやわらかで ほとけさまのぬくもり感みたいなものが 読んでいてつたわるようなイメージがしますよね。
阿弥陀経でも 漢音は ごつごつした感じで やはり呉音がいいなぁって思います。