目連という人の能力
お釈迦様のお弟子さんの中に目連(もくれん)という人がいました。 神通第一と呼ばれるほど、神通力を会得していました。 ある日のこと、目連さんは神通力の一つである、天眼通(てんげんづう)を使いました。 天眼通とは、世間のすべてを見通す力のことです。
お母さんは今どこにいるの・・・
目連のお母さんが亡くなった後、目連さんは思いました。(お母さんはいまどこで、何をしているのだろう・・・。) さっそく目連さんは、天眼通を使い、極楽浄土の母親を探しました。ところがどこを探しても自分の母親の姿が見当たりません。
母親は亡くなったから、当然人間の世界にはいません。 そこで阿修羅の世界を探しましたが、そこにもいませんでした。 おかしいおかしいと思い、畜生の世界を探しましたが、そこにもいませんでした。 そこでまさかと思いつつ、餓鬼(がき)の世界を探してみると、 なんとそこには、自分を愛してくれた母親の姿がありました。
そこで見た母親は、骨と皮だけの状態になっていました。 そこで目蓮さんは、鉢にご飯を持って母親に差し出しましたが、食べようとすると、たちまちご飯は炭になってしまいます。 餓鬼道(がきどう)の世界は、常に飢えに苦しまねばならない世界なのです。
母親を救いたいという思い
そこで目連さんは何とかして母親を助けたいと思いましたが、 目連には見通す能力にはたけていても残念ながらあの世にいる人を助ける能力がありませんでした。 そこでお釈迦様に相談しました。ですが、お釈迦様は「自業自得(じごうじとく)だ」と仰いました。 そして「自業自得」と仰った後、 「目連よ、あなたのお母さんは生きている間、人に物を施すことを知らなかった。 おいしいもの、いいも物はすべて自分が取り込んでしまっていました。 その報いとして今餓鬼道に落ちているのです。 だがそれは、おいしい物、いい物を我が子に与えたいという、母親の愛情の証でもある。 だから、深く見つめれば、原因はお前にもあるのだ。 だから目連よ、母親ができなかったことをあなたが母親に代わって行い、その功徳を施せば、 母親を救うことができるだろう」と仰ったという事です。
そこで目連さんは室内にこもり、他の僧侶たちと一緒に修行にはげみました。 そして、三カ月間の修行を終えたあと、目連さんは他の僧侶たちが修行に出かけるとき、 着るものから、食べ物まですべての施しをしました。 僧侶たちに施しをした後、食べ物に困っている人たちや苦しんでいる人たちにも施しをしました。
そして・・・母親は今どのような世界にいるのだろうかと思い、目連さんは、もう一度あの世の世界を探しました。
再び見つけた母親の姿
まずは、以前にいた餓鬼道を探しました。ですが、そこには母親の姿はありませんでした。 そして、畜生道にも、阿修羅の世界にもいませんでした。そこで今度は、極楽浄土の世界を探してみました。 するとそこには、一本の蓮の花の上に座って、にこにこと微笑んで仏様の教えを聞いている母親の姿が目に飛び込んできました。 こうして、餓鬼道に落ちてしまった目連さんの母親は、極楽の世界へと救われていくことができたとのことです。
お釈迦様は、このように、父母や先祖を想い、施しをするようにといいました。これが、お盆のはじまりです。
盆踊りについて
余談ではありますが、目連さんが、極楽浄土にいる母親を見つけた時、 あまりの嬉しさから、踊り上がって喜び踊り続けたという事です。これが盆踊りの始まりだといわれています。